旧約聖書に挑戦④洪水の物語とノアの箱舟

この「旧約聖書に挑戦」では①創世記の天地創造から②アダムとイブの楽園追放、③ではカインとアベルの物語で人類の最初の殺人事件が起こった。そしてここでは④洪水の物語を扱います。このノアの箱舟の洪水の物語は旧約聖書の創世記の中で初めて史実と関連付けられており考古学者たちの好奇心を長い間刺激し続けている。

旧約聖書、洪水の物語とノアの箱舟


旧約聖書、洪水の物語

旧約聖書の創世記、アダムとイブの物語で神はこの世には悪が力を増したと告げる。アダムとイブの息子のカインは弟アベルを殺し人類最初の殺人事件が起きた。その後人間は増えていくが悪がこの世にはびこり神はそれらの悪を洗い流すため大洪水を起こされた。

旧約聖書アダムとイブの子孫たち

アダムとイブの最初の2人の子供がカインとアベル。アベルはカインに殺されカインは神に追放された。アダムとエバは再び子供を授かり何世代もの後にその子孫たちは世界中に満ちた。しかし世の中は乱れ暴虐に満ちた。全ての人が道を乱していた。

神は深く嘆き

「私が造った人間たちを滅ぼしてしまおう。動物も鳥もすべて。あれらを造った事を私は後悔している」

旧約聖書、神の心に叶う男ノア

ノアの箱舟、動物たちの乗船
De Edward Hicks, American, 1780 – 1849 (1780 – 1849) – Artist/Maker (American)Nació en: Langhorne, Pennsylvania, United States. Murió en: Newtown, Pennsylvania, United States.Detalles del artista en Google Art Project – aQFz9qNv8QS26Q en el Instituto Cultural de Google resolución máxima, Dominio público, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=21886421

そんな邪悪な世界でただ一人の男だけが神の心に叶う者だった。

その男の名はノアといった。

神はノアに言われた。

「私はこの世界を洗い流してしまうつもりだ。お前は特別な船を造りなさい。大きな箱の形をした船を。船は糸杉の木で作り中に沢山の部屋を造りなさい。内側と外側はアスファルトで塗り3つの階を造り横に扉をひとつ付なさい。この地上の物は全て滅ぼされるが私はあなたと特別な契約を結ぶことにする」

ノアは神が言われた通りにした。

神はまたノアに言われた。

「私はあなたと契約を結ぼう。あなたはあなたの妻と子供、子の妻達と共に箱舟に入りなさい。全ての生き物の中からつがいを箱舟の中に入れてその命を保たせなさい。全ての種類の生き物が再び地で産み育つように」

ノアはその通りにした。

洪水が起きる

システィーナ礼拝堂の大洪水の天井画、ミケランジェロ
wikipedia Public Domain

 

ノアは家族と動物、鳥たちと共に箱舟に入った。7日の後に洪水が始まった。

洪水が起こったときノアは6百歳だった。雨は40日間昼も夜もやまずに降り続き水は山を覆った。地上の動くものすべて、鳥も家畜も獣も地に這う物も、全ての人も皆滅びこの世から拭い去られた。

水は150日間にわたり地上にみなぎった。

ノアと共に箱舟に守られたものだけが助かった。

神はノアを忘れなかった

何日も過ぎた後、神は風を送られた。嵐の雲は吹き散らされ水はゆっくりと引いて行った。

水が地から引いて150日の後の7月17日、箱舟はアララトの山にとどまった。水は更に引いて10月になり山々の頂が見える様になった。

40日経ってノアは箱舟の窓を開いて渡りカラスを放った。渡りカラスはあちらこちらへ飛び回った。

それからノアは鳩を放った。鳩は足を止めるところが見つからずに箱舟のノアの所へ戻って来た。

それから7日経ってノアは再び鳩を放った。鳩は夕方になってノアの元に戻って来るとオリーブの若葉をくちばしにくわえていた。

更に7日待って鳩を放ったところもうその鳩はノアの所には戻ってこなかった。

数日が過ぎ水は更に引きノアは周りに土を見る事が出来た。

神はノアに言われた。

「さあ、お前と妻、息子とその妻たちは箱舟から出るがよい。そして全ての動物と鳥を自由にしてやりなさい。そうすれば彼らは子を産み地に広がって行くであろう」

そしてノアはそのようにした。

約束の虹

約束の虹
wikipedia Public Domain

それからノアは祭壇を築き洪水から守ってくださった神に感謝をした。

神は喜ばれノアに約束された。

「もう2度とこのような形で世を滅ぼしたりしない。人は弱く、悪の誘惑を退けられない事を私は知っている。約束しよう、この世が続く限りいつも種をまくときが有り、収穫の時があることを。寒いときも暑いときも、夏も冬も昼も夜もあることを。生きとし生けるものはこの言葉を信じて良い。だから、産み、育て、この地を生き物で満たすのだ。約束のしるしとして、私は大地に虹をかけよう。空が雲に覆われて暗いとき、虹のアーチがかかったなら、それは私が言った事を覚えているという印である。全ての生き物と人への約束を私は決して忘れないし破らない」

おなじ虹を見ても

私はこの旧約聖書の部分が好きだ。旧約聖書のこの部分を知っていれば虹を見るたびに神の約束を思い出すだろう。「ああ綺麗な虹が出ている」で終わるより「旧約聖書で神は人間をもう苦しめないと約束してくれた虹が出ている」と思って虹を見ると随分深いものがある。

旧約聖書創世記ノアと神との契約

神はノアとその子らを祝福して言われた。

「産めよ、増えよ、地に満ちよ。地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這う全ての物、海の全ての魚は恐れおののいて、あなた方の支配に服し、すべての生きて動くものはあなたがたの食物となるであろう。先に青草をあなた方に与えたように、私はこれらの物を見なあなた方に与える。しかし肉を、その命である地のままで、食べてはならない。あなた方の命の血を流すものにあ、私は必ず報復するであろう。いかなる獣にも報復する。兄弟であるひとにも私は人の命の為に、報復するであろう」

「私があなた方とたてるこの契約によりもはや二度と洪水は起こらない。これはあなた方およびあなた方と主にいるすべての生き物との間に世々限りなく、虹は私が立てる契約のしるしである」

洪水の話は歴史なのか神話なのか

実は似たような洪水の話は古代のあらゆるところに残っているという。その洪水伝説のなかで旧約聖書の洪水の物語と共通点が多いのがバビロニア神話のギルガメッシュ叙事詩。

ギルガメッシュ叙事詩は紀元前3000年頃にメソポタミアで書かれており世界最古の物。旧約聖書より2000年位前に書かれた物語だ。

箱舟のサイズは黄金比

ノアの箱舟のサイズの比率は30:5:3.これは旧約聖書に記述されている具体的な数字。この比率は今も大型タンカー等を造る時に使う最適な比率であるというのは驚きだ。

ノアの箱舟が着いた山は?

旧約聖書、創世記にはノアの箱舟が着いたアララトの山は古代アルメニアの地域にあると記されている。現在のトルコにアララトという山がありそこがノアの箱舟が着いた所だという説が最も有力だ。

ノアの箱舟が発見された?

長い間多くの探検家がノアの箱舟を探していた。2010年に中国とトルコ探検家チームがトルコのアララト産の山頂付近で船の木片を発見したと発表している。表九400メートル地点で発見された構造物で炭素年代測定を行ったところ4800年前の物と確認されたらしい。

旧約聖書ノアの箱舟まとめ

どうやら洪水があった事は事実。だが地球規模の洪水ではなく地域的な洪水が何度か起こってその物語が様々な民族で継承されていたのに違いない。箱舟の遺構が本物なら巨大な船を作る技術や多くの動物と150日間も箱舟で生活できたのかと疑問はまだまだ残る。

旧約聖書に挑戦⑤バベルの塔の物語、こうして人の言葉はバラバラになったのです