旧約聖書に挑戦⑧、アブラハムの物語その三、イサクの犠牲とアブラハムの最後

長い長い旧約聖書を読んでいくシリーズです。その中でもアブラハムの話は長いので三つの章に分けた最後の物語。この最終章はアブラハムが100歳で授かった息子イサクを神に差し出すイサクの犠牲のお話。

 

旧約聖書・イサクの犠牲とアブラハムの最後


アブラハムの物語前回まであらすじ

アブラハムは神の声を聞いて故郷を捨ててカナンの地へ。旅で豊かになったアブラハムと甥のロトは別れて暮らすことに。ロトが選んだのは豊かなソドム、ところがソドムは悪徳の街で神に滅ぼされる。神はアブラハムに現れ子孫が星の数程増えると契約を結び、神の予言通り息子が生まれた。アブラハム100歳の時に生まれた息子はイサクと名付けられた。

イサクが産まれて数年が経った

「アブラハムよ」神は言われた。「あなたの子あなたの愛するひとり子を連れてモリヤの地にいき、私が示すところで彼を犠牲として捧げなさい」

神が命じたモリヤの山へ登っていく。

アブラハムは朝早く起きてロバに鞍を置き二人の若者とイサクを連れて燔祭用の薪を割り神が示されたところに行った。

三日目にアブラハムは目を上げて若者たちに言った「あなた方はロバと一緒にここにいなさい。私とイサクは向こうで礼拝し戻ってきます」

アブラハムは焚き木をイサクに担がせ、手に火と刃物を持ち歩き始めた。

イサクは父に聞いた。「火と焚き木はありますが燔祭の子羊はどこにいるんですか?」

「子よ、神自ら燔祭の子羊を備えてくださるであろう」

 

イサクを連れて行ったモリヤの山はどこ?

モリヤの山はどこにあるのかは今も議論されているようだがかつてのエルサレム神殿があった場所ではないかといわれている。

旧約に納められたユダヤの歴史書=歴代誌という書物に「ソロモンはエルサレムのモリヤ山で主の神殿の建築を始めた。そこは主が父ダビデに現れた場所でかつてエブス人オルナンの麦打ち場であった」とあるが否定している学者もいるらしい。

現在はそこに岩のドームが築かれていてイスラム教の第三の聖地になっている。

*預言者モハメッドが大天使ガブリエルに連れられ一夜の内にカーバ神殿からエルサレムの神殿まで旅をして天馬ブラークに乗って昇天し神の御前に至った場所。

アブラハム、イサクを祭壇へ

イサクの燔祭
wikipedia public domain

聖書に戻ろう

彼らが神が示された所へ行くとアブラハムはそこに祭壇を築き焚き木を並べイサクを縛って焚き木の上に乗せた。

そしてアブラハムが刃物を取ってイサクへ向かうと天使が天から彼を呼んだ。

「アブラハムよ、アブラハムよ」

「はい、ここにおります」

「その子に手をかけてはならない。あなたは大切な子供を私に捧げようとしたのであなたが神に従う者であることがわかった」

アブラハムが目をあげると後ろに角を藪に引っ掛けている雄羊がいた。アブラハムは雄羊を生贄として捧げそこの名をアドナイ・エレと呼んだ。

こうしてアブラハムは神に受け入れられた

神は再び天からアブラハムを呼んで「私は誓う、あなたが大事な一人息子も惜しまず神に差し出したので私はあなたを祝福しあなたの子孫を増やし天の星のように、浜辺の砂のようにする。」

こうしてアブラハムは神を信じた信仰、唯一の息子までも神の希望とあれば犠牲にする神に対する信仰によって神に受け入れられた。

サラの埋葬

その後サラはカナンの地ヘブロンで127歳でこの世を去った。アブラハムはサラの為に胸を打ち嘆き悲しんだ。

ヘブロンの場所
Google マップで筆写作成

サラを葬るためにアブラハムはヘブロンのマクペラの洞窟を買い取った。

アブラハムは地元のヘトの人々に「私はここに一時的にいる者ですがあなた方が所有する土地を譲ってください。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」

その土地の所有者エフロンから銀400シェケルを計り渡した。

マクぺラの洞窟

マクベラの現在
wikipedia public domain Israel Hebron Cave of the Patriarchs.jpg

このマクベラの洞窟は以前にマレムの樫の木として登場する場所で神がアブラハムとサラに現れてイサクの誕生の話をした所。マクペラはヘブライ語で「2倍・2重」と言った意味があるという。更にこの400年後にカナンの地に戻ってきたアブラハムの子孫、ダビデはここヘブロンでイスラエル王国を建国したという重要な場所。

マクぺラの洞窟事件

マクぺラ洞窟は2つの区画に分けられていてユダヤ教徒とイスラム教徒の礼拝の場。1994年2月25日、アメリカ出身のユダヤ人医師でユダヤ極右思想の活動家が祈りに来たパレスチナ人ムスリムに向かって銃撃。

イサクの嫁探し

アブラハムは140歳になっていた。息子のイサクは40歳。アブラハムはイサクに故郷ナホルの親戚から結婚相手を探すことにした。その条件はカナン人では無い事、故郷のナホルの親戚である事、カナンに連れてくる事。

アブラハムの使いエリエゼルはラクダ10頭と高価な贈り物を持って旅立った。

使いのエリエゼルは井戸のそばで神に祈った。するとそこへリベカが水を汲みにやってきて彼が祈った通りの言動、水瓶から水をエリエゼルに飲ませてラクダにも水を飲ませた。

エリエゼルは持ってきた装飾品をリベカに贈りリベカの家族に会って一部始終を説明した。

リベカもこれは神の決めた事と納得してエリエゼルと共にイサクの元へ行った。

実はアブラハムはもう一度結婚し子供を得る

実はアブラハムはもう一度結婚して子供を得ているのだ。本当はこの章はここで終了しようと思っていたのだが気になったので聖書を読み進めてみた。

創世記25章1:アブラハムは再び妻をめとった。名をケトラという。彼女は六人の子供を産んだ・・・とある。まあいいけど。

アブラハムの最後

アブラハムが生きたのは175年である。アブラハムは高齢になり歳が満ちて息絶えた。息子のイサクとイシュマエルによってマクベラの洞窟に葬られた。

 

旧約聖書に挑戦⑦ アブラハムの物語その二「三人の天使とソドムとゴモラそしてイサクの誕生」

長い長い旧約聖書を読んでいくシリーズですアブラハムの物語。旧約聖書のアブラハムの物語は長いのでここでは神の声を聞いたアブラハムが故郷を捨てたあとの物語。

アブラハムについては考古学上の発見や聖書に出てくる地理的位置が正確なので実在した人物となっている。

旧約聖書・アブラハムの息子イサクの誕生


アブラハムの物語、前回まであらすじ

アブラハムは神の声を聞いて故郷を捨ててカナンの地へ。さらに飢饉でエジプトへ行きファラオから貰ったもので豊かになった。アブラハムと甥ロトの従者たちに揉め事が起こり始めたので二人は分かれて別の道を行く。ロトは豊かなソドムとゴモラを選んで住んだ。子供がいないアブラハムは妻サラが差し出した奴隷女ハガルとの間に子供を得た。神はアブラハムに現れ、妻のサラに子供が生まれる、そしてあなたの子孫は星の数ほどに増えて栄えると予言した。

アブラムに3人の天使現る

ギュスターヴ・ドレ
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旧約聖書のこの部分は長くて複雑なので物語のあらすじを紹介します。

ある夏の暑い日に(ここは砂漠で昼間はとっても暑い)マレムの樫の木のかたわらでアブラハムの前に三人の旅人が現れた。彼らの習慣では旅人には親切にすることが善行だったのでアブラハムは彼らに「どうぞ中に入って足を洗って休んでいってください。食べ物を準備しますので」と言って旅人をもてなした。

どうやらこのうちの一人は神で二人は天使だったのだ。教えないのに妻の名を知っているではないか。

しかも彼らはアブラハムにあなたの妻サラは「来年の春に男の子を産むでしょう」と言ったので年老いたサラは「二人とも老人なのにそんなわけないでしょ」と心で笑った。

すると旅人の一人はアブラハムに

「なぜサラは自分が老人であるのに子を生むことができようかと笑ったのか。主にとって不可能なことがありましょうか。来年の春私はあなたのところに帰ってきます。その時サラには男の子が生まれているでしょう」

やっぱり神だったのだ、なんでも知っている。

その人々はそこを立ってソドムのほうに向かった。

ソドムとゴモラは悪徳の街だった

三人の使いはアブラハムにソドムとゴモラを滅ぼす話をする。

*ソドムとゴモラの場所を調べてみた。一応この辺りで考古学的にも検証されているようだ。

ソドムとゴモラの地図
Google マップで筆者撮影

アブラハムはそこには甥のロトがいるので滅ぼさないように天使たちに頼む。天使たちはそこに正しいものが十人いれば滅ぼさないとアブラハムに約束した。

悪徳の町ソドムとゴモラ

二人の天使たちはソドムに着いた。天使たちがロトの家を訪ねたときロトたちは彼らを守るため家に招き入れた。だがそれを見ていたソドムの人たちはロトの家に押しかけ二人の天使を引き渡せと家を取り囲んだのだ。ロトは二人を守るため外に出て民衆を抑えようとしたが民衆が暴れたので天使が出てきて民衆の目を眩ませたので彼らは入り口が見えなくなった。

 

二人の天使たちはロトに「他にあなたの身内がこの街にいますか?もしいたら皆ここから連れ出しなさい。私たちはこの街を滅ぼします。」とロトの身内の者を助けてくれようとしたが誰もロトの話を聞き入れないのだ。

夜が明けて二人の天使たちは呆れてロトに「ここにいるあなたの妻と二人の娘を連れ出しなさい。そうしなければあなたもこの街の不義のため滅ぼされるでしょう。」

「自分の命を救いなさい。後ろを振り返ってはいけない。低地にはどこも立ち止まってはいけない。山に逃れなさい」

ソドムとゴモラの破壊
wikipedia Public Domain

神は硫黄と火を天からソドムとゴモラの上にふらせこれらの街をことごとく滅ぼされた。

しかしロトの妻は後ろを振り返ったので塩の柱になった。

*ソドムとゴモラは考古学者によってほぼ確定されていて文明の進んだ大きな街だった。地殻変動などの大きな自然災害で滅亡したかもしれない。

*ロトの妻の塩の柱と言われるものが現存するらしいがもちろん真偽の程は不明。

ふと読みながら「振り返ってはいけない」が教訓なのかもしれない、と思った。

アブラハム100歳で妻のサラ90歳に子供が産まれる

神の約束は本当となりサラは身籠りアブラハムに息子を与えた。

子供はイサクと名付けられた。イサクは「彼は笑う」と言う意味だ。

イサクが生まれたときアブラハムは100歳だった。

アブラハムの物語はまだ続きます

この後が有名なお話でやっと産まれた大事な息子イサクを犠牲にする場面がでてきます。長い長い物語なので次の章に分けて続けます。

 

旧約聖書に挑戦⑥アブラハムの物語その一、神との契約

長い長い旧約聖書を読んでいくシリーズです。旧約聖書の天地創造からアダムとイブの物語、洪水の物語までを前回までにまとめたが物語は時間の霧の中にあり歴史としての定義はまだまだ不明だ。ここでは続いてアブラハムと神の契約の物語。

アブラハムについては考古学上の発見や聖書に出てくる地理的位置が正確なので実在した人物となっている。アブラハムの物語は滅茶苦茶に長いので三部に分けることにしました。その一はアブラハムの神との契約です。

旧約聖書・アブラハムと聖なる契約の物語


アブラハムはキリスト教ユダヤ教イスラム教を信仰する啓典の民の始祖

ノアの洪水のあと神から祝福を受けた最初の人間が「アブラハム」という人物で今回の主人公。アブラハムはユダヤ教だけでなくキリスト教イスラム教を信仰する「経典の民」の始祖として今も崇められている。

*「経典」とは神の啓示すなわち神の言葉。神の言葉が書かれた書物=旧約聖書、新約聖書とコーラン。

実はアブラハムはノアの子孫。あの「ノアの方舟」のノアには3人の息子たちセム、ハム、ヤペテがいた。3人のうちのセムから数えて10代目がアブラハム。ノアはアブラハム2歳の時没したとなっているのでノアはすごい長寿でびっくりだ。そしてノアはアダムとエバの子孫なのでアブラハムもアダムとエバの子孫となりその後ダビデ、ソロモン、イエス・キリストまでこの血筋は繋がっていて、これまた凄い。

旧約聖書アブラハムの物語

では旧約聖書を読んでいきます。

メソポタミアの地カルデラのウルにアブラム(まだ彼の名はアブラハムではなくアブラム)という男が住んでいた。

*ウルがどこなんだろうと調べてみたら南部説と北部説があるらしい。

ウルの場所は今もメソポタミアの南部説と北部説がある(下地図参照)地図は大体の位置です。

アブラハムの生まれたウルの場所の地図
Google マップで筆者作成

裕福な遊牧民の家に生まれた彼は美しいサライ(まだ彼女の名サラではなくサライ)という名の女と結婚した。彼女はとても美しかったが子供が出来なかった。夫も妻も子孫を残せない事を残念に思っていた。

*アブラハムの時代のメソポタミアはシュメール文化の時代。シュメール人はメソポタミアで最初に文明を築いた謎の民族。美術、数学、天文学、建築、が発達しており文字や文学に学校まだあった高度文明だった。

アブラムの父はテラという。テラはアブラムとその妻サライとロトを連れてウルを出てハランに移動しそこに住んだ。アブラムの父テラはそこで205歳の一生を終える。えっ205歳?旧約に出てくる人たちは長寿だ。

神の声「この土地を捨てて私が示す地へ行きなさい」

神はアブラムに言われた。

「故郷と親戚とおまえの父の家を離れて、私が示す地に行きなさい。私はお前に沢山の子孫を与えよう。彼らは偉大な民族となる。私はお前を祝福し、お前の名を高めよう。祝福の源となるように。私はお前を通してこの民族を祝福しよう」

アブラムは神の言葉に従った。

ということでアブラムは快適な暮らしを捨てて神の声に従い放浪の旅に出たのだ。しかも75歳。妻サライと弟の子供ロトと集めた全ての財産と人々を従えてカナンまで移動した。妻もよくついて行った、感心。

*カナンの地とはどこなんだろうと調べてみたら、現在のパレスティナとイスラエル。地中海とヨルダン川、死海に囲まれた一帯で、乳と密の流れる場所と聖書に描写される。カナンに住むカナン人はフェニキア人との説がある。まさに紛争の地でここにイスラエルを建国したというわけだ。

旧約聖書カナンの地
世界聖書地図より筆写作成

***歴史のお話・パレスチナ問題***

神がアブラハムに「あなたの子孫に与えるといったカナンの地」はユダヤ人にとって「約束の地」。その後カナンは様々な民族に支配されるが「出エジプト紀」にあるようにモーゼはエジプトからユダヤ人を連れて出て「約束の地、カナン」に戻った。

紀元前1095年には国を作り栄えるがソロモン王の死後、内紛が起こりイスラエル王国とユダ王国に分裂。

後イスラエル王国はアッシリアに滅ぼされ(紀元前722年)ユダ王国はバビロニアに奴隷にされる(紀元前588年)。

もう一度国を再建するがローマ人により(紀元前70年頃)国を破壊されカナンから追い出され、その約1900年後1948年約束の地パレスチナにイスラエルを建国した。後ろに英米独仏の複雑で利己的な(特にイギリス)の醜い取引があったのは周知の事実。

神あらわる

神は又してもアブラムに現れて言われた。(神はこの後も何度も現れる。)

「私はあなたの子孫にこの土地を与えます」

アブラムは彼に現れた神の為にそこに祭壇を築いて神の名を呼んだ。

が、その土地が飢饉になったのでエジプトへ移動した。

アブラム、エジプトへ

カナンからエジプト
Google マップより筆写作成

エジプトへ入ろうとしたときアブラムは妻サライに言った。

「あなたは大変美しいのでエジプト人には私の妹と言ってください。妻だと言うと私はエジプト人に危険な目にあわされるでしょう」

エジプトに入るとやはり人々はサライを美しい人であると褒めた。エジプトの王の高官たちもサライを褒めたので王の家に招かれた。そしてエジプトの王はサライの兄であるというアブラムに多くの羊、牛、ロバや奴隷やラクダを与えた。

 

 

アブラハムはあっさり妻をエジプトの王に差し出すつもりだったという事?そしてその見返りにエジプト王から沢山の見返りをもらっている。これは美談なのか、旧約聖書は難解だ。

神はエジプトに疫病を下す

ところが神はアブラムの妻サライがエジプトの王の家に入った事に怒り、エジプトの王ファラオの家と王家に激しい疫病と災難で痛めつけた。

エジプトの王は全てを悟り(神はアブラムの側にいる事を知る)アブラム一行を全ての持ち物とともにカナンの地へ送り出した。

聖書の記述

「あなたは私になんという事をしたのですか。なぜ彼女があなたの妹と言ったのですか。私は彼女を妻にしようとしていました。さあ、あなたの妻はここにいます。連れて行ってください」

「先に言っといてくれたらこんなひどい目に遭わないのになんで嘘つくの?」ってことでファラオが正しい。

アブラム、エジプトを去る

アブラムは妻と全ての持ち物を持ってエジプトを出てネゲブに戻った。甥のロトも従った。

アブラムは家畜や金銀にと大変豊かになっていた。彼はネゲブから旅をすすめぺテルへ向かい、ペテルとアイの間の最初に祭壇を造った所へ戻り祈った。

ところがここは土地が狭くてアブラハムもロトもたくさんの家畜や奴隷や財宝があって牧者の間で争いが起こるようになった。

アブラムはロトに提案「別々の道を行こう」

アブラムはロトに言った。これ以上揉め事が起こらないよう別の道を行こう。目の前に大きな土地が有るではないですか。

「どうかわたしと別れてください、あなたが右に行けば私は左に、あなたか左に行けば私は右に行きます」

ロトがヨルダンの低地を見渡すとそこは豊かで良く潤っていた。そしてその地を選び取ってヨルダン川東側へ移った。そこは神がソドムとゴモラを滅ぼす前だったので豊かで潤っていた。ロトはソドムへ移動したがソドムの人々は悪く罪深かった。

ソドムとゴモラは実在した?

有名な悪徳の街ソドムとゴモラは近年の考古学的な調査で実在したことは確からしい。ソドムもゴモラも大きな都市遺跡らしきものが残り大変繁栄していたようだ。

遺跡の成分を調査すると遺跡が硫酸カルシウムで出来ているらしく、硫酸カルシウムは石灰岩が硫黄で燃やされたときに出る副産物だという。そしてその遺跡の中から純度が高い硫黄の玉が沢山発見されているという。

聖書と史実については今も研究が続けられているがこの辺りに非常に高度な技術の大きな街があったことは確かで災害か何かで滅びたことはどうやら間違いないらしい。

ソドムとゴモラの地図
Google マップで筆者撮影

 

アブラムに神の言葉「あなたの子孫は未来永劫栄えます」

聖書に戻ろう。

神はアブラムに現れて言われた。

「さあ、目を上げてあなたのいるところからすべての方角を見なさい。

あなたが見渡す地は全てあなたとあなたの子孫に与えよう。

私はあなたの子孫を地のちりのように増やす。

もし人が地のチリを数えることが出来ればあなたの子孫も数える事ができるだろう。

立って、その地を縦と横に歩き回りなさい。

私があなたにその地を与えるのだから」

こうやって神はアブラムにとにかく見渡す限りはあなたの土地で子々孫々にわたる未来永劫の繁栄を約束したのである。

アブラハムは天幕を移してヘブロンにあるマレムの樫の木のかたわらに住み主の祭壇を築いた。

*ベブロンは何処だろう?と調べてみた。ヘブロンはパレスティナ自治区、アブラハムのお墓があるユダヤ人の聖地なので現在対立の過激なところらしい。マレムの樫の木は現存するらしく現在はロシア正教会の敷地内にあるという。

ヘブロンの場所
Google マップで筆写作成

しかしアブラムは75歳になっても子供に恵まれなかった

神はアブラムとその子孫が繁栄するというがこんなに高齢で子供もいないのにいったい・・・という対話が続く。旧約聖書はくどい、同じ話が繰り返し繰り返し続く。

アブラムは神に言った。

「主なる神よ、私には子がないのにあなたは私に何をくださろうとするのですか」

すると神はアブラムを外へ連れ出して言われた、

神の言葉

「天を仰いで星を数える事ができるなら数えてみるがよい。

あなたの子孫はこのようになる」

神は75歳の子供がいないアブラムの子孫が星の数ほど増えるというのだ。

アブラムはいくら神の言葉でもそんな事はありえない、と思ったに違いない。

アブラムは妻の奴隷のハガルとの間に子供

アブラムの妻サライは高齢で子供を持てないので奴隷の女ハガルをアブラムに与えた。

これは当時の風習では珍しいことでは無かったという。

一説によるとエジプトから出た時に連れきた女性がハガル。エジプトの女奴隷ハガルはアブラムの子を宿すとサライを見下すようになった。思いあがって態度が大きくなったのだ。どこにでもありそうな話だ。

サライはアブラムを責める。「あなたが彼女を必要以上に重んじたからこうなった」「アブラハムあなたが悪い〜キーーッ」となったのでアブラムはサライに「お前のいいようにしなさい」と突き放した。

するとサライはハガルを思いっきり苛めたのでハガルは逃げ出した。

これもどこにでもありそうな話だ。

下の絵はルーベンスが描いた家を出ていくハガルの場面。サライは怒っていて手を振り上げている、アブラハムは天を見上げて困っている。

ハガルとサライ
wikipedia public domain

荒野の泉で途方に暮れているハガルのところに神の使いがやってきて話しかけた。

「あなたは女主人の元に戻りなさい。あなたは男の子を産むでしょう.その子にイシュマエルと名付けなさい」

その時アブラムは86歳。

アブラハム99歳、神と契約をかわし「アブラハム」と改名

アブラハム99歳、再び神が現れた。このときにアブラムの名はアブラハム、サライの名がサラとなる。

「私は全知全能の神である。私はあなたと契約を結び大いにあなたの子孫をふやすであろう」

「私はあなたと契約をむすぶ。あなたは多くの国民の父となるであろう。あなたの名はもはやアブラムとは言われずアブラハム。あなたの妻の名はサライとは言われずサラ。私は彼女を祝福しあなたに一人の男の子を授けよう。その子をイサクと名づけなさい」

アブラハムは心の中で「もう100歳なのに子供ができるわけがない。妻のサラも90歳になってどうして子供を産むことができようか」

アブラハムは神は勘違いしていて息子のイシュマエルの話をしている?と思った。

が、神は言われた。

「いや、あなたの妻サラはあなたに男の子を産むでしょう。名をイサクと名付けなさい。私は彼と契約を立てての地の子孫のために永遠の契約としよう」

アブラハムの物語その後

アブラハムの物語は長くこの後三人の天使が現れたりソドムとゴモラが滅亡したり、ついに息子が産まれたり。そしてその大事な息子イサクを犠牲にしなさいと神に言われる。とっても長いお話の第一話はここで終了です

 

旧約聖書に挑戦⑤バベルの塔の物語、こうして人の言葉はバラバラになったのです

旧約聖書の創世記11章1節から9節に出てくる短いお話がバベルの塔の物語。ノアの箱舟の後の人間たちが登場し非常に難解で解釈も様々だ。

旧約聖書の創世記バベルの塔の物語


旧約聖書、創世記のバベルの塔

バベルの塔、ブリューゲル
By ピーテル・ブリューゲル – Levels adjusted from File:Pieter_Bruegel_the_Elder_-_The_Tower_of_Babel_(Vienna)_-_Google_Art_Project.jpg, originally from Google Art Project., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22179117

この物語は絵画やテーマやゲームでも聞いた事がある人が多いのではないか。旧約聖書の創世記のノアの箱舟の物語の後に続く短い物語だ。バベルと言う名前はへブル語で混乱を現す言葉から来ているそう。

旧約聖書バベルの塔はノアの箱舟の後の物語

洪水の後神は人間に約束をされた。「私はもう二度と洪水を起こさない。産めよ増えよ地に満ちよ」

そしてそしてノアは洪水の後350年生き950歳で神に召された。

バベルの塔の聖書部分

聖書を読んでいこう<旧約聖書創世記第10章>

ノアの子セム、ハム、ヤぺテの系図は次の通り。洪水の後彼らに子が生まれた。

ヤぺテの子孫はゴメル、マゴグ、マダイ、ヤリン、トマル、メセク、テラス。ゴメルの子孫は・・・と延々と名前が続き、人間が増えて洪水の後様々な土地に分かれて住んでいた。

バベルの塔の絵
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<旧約聖書創世記第11章>

全地は同じ言語で同じ言葉であった。時に人々は東に移り、シナルの地に平野を得てそこに住んだ。

彼らは互いに言った。

「さあ、レンガを造って火で焼こう」

こうして彼らは石の代わりにレンガを得て、漆喰のかわりにアスファルトを得た。

彼らはまた言った。

「さあ、街を造り塔を建てよう、その塔の先がを天に届くほどの。そして我々は名を上げて、全地の表に散るのを逃れよう。消え去ることが無いように」

神は降りて来て人をバラバラにして多言語にした

バベルで混乱する人間の版画
wikipedia Public Domain

時に神は降りて来て人の子たちの建てる街と塔を見て言われた。

「民はひとつで、皆同じ言葉である。彼らは既にこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはやこのままでは済まないであろう。さあ、我々は下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互いに言葉が通じないようにしよう」

こうして神は人をすべての地に散らされたので彼らは街を造るのをやめた。これによってその街の名はバベルと呼ばれた。神がそこで、全地の言葉を乱し、そこから人を全地に散らされたからである。

旧約聖書バベルの塔の解釈

バベルの塔の解釈は「人間が塔を造り神に挑戦しようとしたので神は塔を壊した」というのが一般的な解釈。

今では実現不可能な計画の事をバベルの塔という。

バベルの塔は歴史?

バベルの塔の話は神話とする説が支配的だ。そしてバベルの塔という言葉は聖書には出てこない。

「人はそこに街と塔を築いた。街の名はバベル」

というのが聖書の記述だ。

バベルはヘブライ語で「ごちゃまぜ」という意味、アッカド語では「神の門」を意味するという。

バベルの塔があった場所は?

旧約聖書でバベルと呼ばれた場所は現在のイラクの首都バグダッドの南に位置していて後にバビロンを呼ばれる。この地域にはジグラットと呼ばれる巨大な遺跡が発見されておりバベルの塔はジグラットだったと考えられている。

ジグラット

シュメール人たちは元々山岳に住んでいた。彼らが平地に降りて来たときに高い所で祈れるように神殿を造ったという説がある。

チグリス・ユーフラテスの両河にはさまれる肥沃な土地はメソポタミアと呼ばれ世界最古の文明の地だ。メソポタミアはギリシャ語で両河の間という意味だそう。

河によってもたらされた肥沃な大地だがこの大河は度々氾濫を起こし激しい洪水をもたらした。

洪水に備える高い塔=ジグラットを造ったという説は納得が出来る。

バベルの塔は7階建て

ある説ではバベルの塔は7層で高さ90メートル、最上階には神殿があった。バベルの塔の7層は各曜日を示しておりその曜日が太陽の周りを廻る惑星と対応していたという。

もしかしたらこれがバベルの塔かもというのがある

バビロンにあるエテメンアンキのジクラットは一辺が90メートルの正方形、高さも90メートルという巨大な建築物。このジグラットの内部に焼きレンガやアスファルトが使われていてこれこそが旧約聖書に出てくるバベルの塔という説がある。紀元前7世紀ネブカドネザル2世の時に完成した。

バベルは歴史か神話か

バベルの塔がジグラットなのはどうやら信憑性がありそうだ。物語は後からついてきたとしても。今も沢山のジグラットが残るという。これらのジグラットは後にペルシャの征服とアレキサンダー大帝の遠征で廃れていったらしい。

聖書はこの辺りから実在した歴史上の王や街や史実との関わり合いが現実化して来たがいまだ謎は多い。

旧約聖書の創世記はこの後多くの子孫が生まれそしてアブラハムが生まれる。

 

旧約聖書に挑戦④洪水の物語とノアの箱舟

この「旧約聖書に挑戦」では①創世記の天地創造から②アダムとイブの楽園追放、③ではカインとアベルの物語で人類の最初の殺人事件が起こった。そしてここでは④洪水の物語を扱います。このノアの箱舟の洪水の物語は旧約聖書の創世記の中で初めて史実と関連付けられており考古学者たちの好奇心を長い間刺激し続けている。

旧約聖書、洪水の物語とノアの箱舟


旧約聖書、洪水の物語

旧約聖書の創世記、アダムとイブの物語で神はこの世には悪が力を増したと告げる。アダムとイブの息子のカインは弟アベルを殺し人類最初の殺人事件が起きた。その後人間は増えていくが悪がこの世にはびこり神はそれらの悪を洗い流すため大洪水を起こされた。

旧約聖書アダムとイブの子孫たち

アダムとイブの最初の2人の子供がカインとアベル。アベルはカインに殺されカインは神に追放された。アダムとエバは再び子供を授かり何世代もの後にその子孫たちは世界中に満ちた。しかし世の中は乱れ暴虐に満ちた。全ての人が道を乱していた。

神は深く嘆き

「私が造った人間たちを滅ぼしてしまおう。動物も鳥もすべて。あれらを造った事を私は後悔している」

旧約聖書、神の心に叶う男ノア

ノアの箱舟、動物たちの乗船
De Edward Hicks, American, 1780 – 1849 (1780 – 1849) – Artist/Maker (American)Nació en: Langhorne, Pennsylvania, United States. Murió en: Newtown, Pennsylvania, United States.Detalles del artista en Google Art Project – aQFz9qNv8QS26Q en el Instituto Cultural de Google resolución máxima, Dominio público, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=21886421

そんな邪悪な世界でただ一人の男だけが神の心に叶う者だった。

その男の名はノアといった。

神はノアに言われた。

「私はこの世界を洗い流してしまうつもりだ。お前は特別な船を造りなさい。大きな箱の形をした船を。船は糸杉の木で作り中に沢山の部屋を造りなさい。内側と外側はアスファルトで塗り3つの階を造り横に扉をひとつ付なさい。この地上の物は全て滅ぼされるが私はあなたと特別な契約を結ぶことにする」

ノアは神が言われた通りにした。

神はまたノアに言われた。

「私はあなたと契約を結ぼう。あなたはあなたの妻と子供、子の妻達と共に箱舟に入りなさい。全ての生き物の中からつがいを箱舟の中に入れてその命を保たせなさい。全ての種類の生き物が再び地で産み育つように」

ノアはその通りにした。

洪水が起きる

システィーナ礼拝堂の大洪水の天井画、ミケランジェロ
wikipedia Public Domain

 

ノアは家族と動物、鳥たちと共に箱舟に入った。7日の後に洪水が始まった。

洪水が起こったときノアは6百歳だった。雨は40日間昼も夜もやまずに降り続き水は山を覆った。地上の動くものすべて、鳥も家畜も獣も地に這う物も、全ての人も皆滅びこの世から拭い去られた。

水は150日間にわたり地上にみなぎった。

ノアと共に箱舟に守られたものだけが助かった。

神はノアを忘れなかった

何日も過ぎた後、神は風を送られた。嵐の雲は吹き散らされ水はゆっくりと引いて行った。

水が地から引いて150日の後の7月17日、箱舟はアララトの山にとどまった。水は更に引いて10月になり山々の頂が見える様になった。

40日経ってノアは箱舟の窓を開いて渡りカラスを放った。渡りカラスはあちらこちらへ飛び回った。

それからノアは鳩を放った。鳩は足を止めるところが見つからずに箱舟のノアの所へ戻って来た。

それから7日経ってノアは再び鳩を放った。鳩は夕方になってノアの元に戻って来るとオリーブの若葉をくちばしにくわえていた。

更に7日待って鳩を放ったところもうその鳩はノアの所には戻ってこなかった。

数日が過ぎ水は更に引きノアは周りに土を見る事が出来た。

神はノアに言われた。

「さあ、お前と妻、息子とその妻たちは箱舟から出るがよい。そして全ての動物と鳥を自由にしてやりなさい。そうすれば彼らは子を産み地に広がって行くであろう」

そしてノアはそのようにした。

約束の虹

約束の虹
wikipedia Public Domain

それからノアは祭壇を築き洪水から守ってくださった神に感謝をした。

神は喜ばれノアに約束された。

「もう2度とこのような形で世を滅ぼしたりしない。人は弱く、悪の誘惑を退けられない事を私は知っている。約束しよう、この世が続く限りいつも種をまくときが有り、収穫の時があることを。寒いときも暑いときも、夏も冬も昼も夜もあることを。生きとし生けるものはこの言葉を信じて良い。だから、産み、育て、この地を生き物で満たすのだ。約束のしるしとして、私は大地に虹をかけよう。空が雲に覆われて暗いとき、虹のアーチがかかったなら、それは私が言った事を覚えているという印である。全ての生き物と人への約束を私は決して忘れないし破らない」

おなじ虹を見ても

私はこの旧約聖書の部分が好きだ。旧約聖書のこの部分を知っていれば虹を見るたびに神の約束を思い出すだろう。「ああ綺麗な虹が出ている」で終わるより「旧約聖書で神は人間をもう苦しめないと約束してくれた虹が出ている」と思って虹を見ると随分深いものがある。

旧約聖書創世記ノアと神との契約

神はノアとその子らを祝福して言われた。

「産めよ、増えよ、地に満ちよ。地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這う全ての物、海の全ての魚は恐れおののいて、あなた方の支配に服し、すべての生きて動くものはあなたがたの食物となるであろう。先に青草をあなた方に与えたように、私はこれらの物を見なあなた方に与える。しかし肉を、その命である地のままで、食べてはならない。あなた方の命の血を流すものにあ、私は必ず報復するであろう。いかなる獣にも報復する。兄弟であるひとにも私は人の命の為に、報復するであろう」

「私があなた方とたてるこの契約によりもはや二度と洪水は起こらない。これはあなた方およびあなた方と主にいるすべての生き物との間に世々限りなく、虹は私が立てる契約のしるしである」

洪水の話は歴史なのか神話なのか

実は似たような洪水の話は古代のあらゆるところに残っているという。その洪水伝説のなかで旧約聖書の洪水の物語と共通点が多いのがバビロニア神話のギルガメッシュ叙事詩。

ギルガメッシュ叙事詩は紀元前3000年頃にメソポタミアで書かれており世界最古の物。旧約聖書より2000年位前に書かれた物語だ。

箱舟のサイズは黄金比

ノアの箱舟のサイズの比率は30:5:3.これは旧約聖書に記述されている具体的な数字。この比率は今も大型タンカー等を造る時に使う最適な比率であるというのは驚きだ。

ノアの箱舟が着いた山は?

旧約聖書、創世記にはノアの箱舟が着いたアララトの山は古代アルメニアの地域にあると記されている。現在のトルコにアララトという山がありそこがノアの箱舟が着いた所だという説が最も有力だ。

ノアの箱舟が発見された?

長い間多くの探検家がノアの箱舟を探していた。2010年に中国とトルコ探検家チームがトルコのアララト産の山頂付近で船の木片を発見したと発表している。表九400メートル地点で発見された構造物で炭素年代測定を行ったところ4800年前の物と確認されたらしい。

旧約聖書ノアの箱舟まとめ

どうやら洪水があった事は事実。だが地球規模の洪水ではなく地域的な洪水が何度か起こってその物語が様々な民族で継承されていたのに違いない。箱舟の遺構が本物なら巨大な船を作る技術や多くの動物と150日間も箱舟で生活できたのかと疑問はまだまだ残る。

旧約聖書に挑戦⑤バベルの塔の物語、こうして人の言葉はバラバラになったのです

 

 

 

旧約聖書に挑戦③カインとアベルの物語

旧約聖書に挑戦③はカインとアベルの兄弟の物語。小説やドラマに取り入れられるこの物語は人類最初の殺人事件だ。人間の神への愛や嫉妬、嘘や罪と罰がテーマになっている。

旧約聖書、カインとアベルの物語


カインとアベルはアダムとエバの息子たち

アダムとエバは楽園を追放されたあと子供を授かった。兄カインが生まれた後弟アベルも生まれた。カインは土を耕すものになりアベルは羊を飼うものとなった。

時が立ちカインとアベルは神に捧げものをする。兄カインは地の産物を神に捧げ、弟アベルは羊の群れの中の初子の最も肥えた物を捧げた。

神は不公平

神はアベルとその捧げものを喜ばれたがカインとその捧げものは喜ばれなかった。カインは憤りそして顔を伏せた。

神はカインに言った。

「なぜ顔を伏せるのですか?正しい事をしているのでしたら顔を上げなさい。もし正しい事をしていないのでしたら罪が門口に待ち伏せをしています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」

嫉妬したカインはアベルを誘って出かける

カインは弟アベルに言った。

「さあ野原へ行こう」

カインとアベル、ルーベンス
wikipedia Public Domain

 

そこでカインはアベルを襲った。これが人類最初の殺人事件。

神はカインに言われた。

「あなたの弟アベルは何処にいますか?」

カインは答えた。

「知りません。私が弟の番人でしょうか?」

カインとアベルの15世紀の絵
Dominio público, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=431380

神は言われた。

「あなたは何をしたのですか?あなたの弟の血の声が土の中から私に叫んでいます。あなたは呪われこの土地を離れなければなりません。この土地はあなたの手から弟アベルの血を受けたからです。あなたが土地を耕しても土地はもはやあなたの為には実を結びません。あなたは地上の放浪者となるでしょう」

カインは追放される

カインとアベル
museo del Prado

カインは神に言った

「私の罰は重くて背負いきれません。あなたは私をこの土地から追放されました。私は地上の放浪者となり私を見つける人は私を襲うでしょう」

神は言われた。

「いや、そうではない。誰でもカインを襲うものは7倍の復讐を受けるでしょう」

神はカインが襲われないように彼に印をつけられた。そしてカインはエデンの東、ノドの地に住んだ。

カインの子供が生まれ子孫が増える

カインは妻を持ち子供が生まれた。その子の名前はエノクといった。エノクに子供が生まれその子にも子供が生まれた。

 

カインの子孫が全ての職業の元

カインの子孫が物を造る職業人の祖先となったと旧約聖書にある。

カインの子孫が築いたエノクの街に3人の兄弟がいた。トバルカイン、ヤバル、ユバル。それぞれ鍛冶屋、遊牧民、音楽家の祖先。

カインと言う名前も鍛冶屋鋳造者を意味する。

 

アダムにも再び子が生まれた

アベルは殺されカインは追放された。2人の息子を失い悲しみに暮れるアダムとイブに神は子を授けた。その子の名前はセツといった。アダムはその他に2人の子供を得て930歳まで生きた。その後9代後にノアが産まれた。

理解に苦しむカインとアベルの物語

この物語の意味や教訓は何だろう。

カインも神に捧げものをしたのに何故神はカインの捧げものを喜ばなかったのか。心理学ではカイン・コンプレックスという言葉も有る。親からの愛情の差による兄弟間の嫉妬の事だ。

アベルは持っている物の中で一番良いものを神に捧げたがカインの贈り物はそうではなかった。「顔を伏せた」とあるのは心にやましい何かがあった、神に捧げたものが一番良いものではなかったのかもしれない。

旧約聖書に挑戦④洪水の物語とノアの箱舟

一神教の神はキビシイ、そしてすぐ怒るし不公平なのだ

旧約聖書の神は人間を罰して追放するのだ。アダムとエバをエデンの園から追い出した時もそうだった。大体最初から不公平で理不尽だ。

旧約聖書の神は完ぺきではないのだ。すぐに怒るし、だいたい不公平でやる事が理不尽だ。

でもその後どうやら人間にチャンスは取っておいてくれるようで、聖書によるとその後の人類は追放されたアダムとイブの子孫と、これも追放されたカインの子孫なのだから。

ここに「日本人と神」と「キリスト教徒(ユダヤ教徒、イスラム教も含め)と神」の関わり合いの違いがあり、考え方の違いの根本があるかもしれない。

 

旧約聖書に挑戦②エデンの園の物語ーアダムとイブは神と共に暮らしていたんです

旧約聖書の最初の5つの章はモーゼ5書と呼ばれモーゼが書いたと伝えられている。実際は異なる時代の合成文書であるという説もあるようで今も謎の世界だ。旧約聖書の創世記は天地創造から始まりエデンの園やノアの箱舟等のどこかで聞いたことがあるお話。このページではエデンの園のアダムとイブの物語を楽園追放までを読み物にしてみた。

旧約聖書エデンの園の物語


旧約聖書の創世記2番目のお話はエデンの園

旧約聖書の創世記の天地創造で神は7日間をかけて世界と人間を造り1日休まれた。

下の絵はプラド美術館にあるボスの快楽の園両側の木の扉を閉めた状態。天地創造の地球、植物が創られ始めたところ。

ヒエロニムスボスの快楽の園
By ヒエロニムス・ボス – Originally uploaded to the English Wikipedia by w:User:Blankfaze., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=148810

旧約聖書ーそして神は人間を造った

神が世界を造ったときそこには植物は無く雨も降らず耕す人もいなかった。神は土を手に取り人間を造った。神はその鼻に息を吹き込むとその男は生きた。

神は東の方、エデンにひとつの園を設けて造った人をそこに置かれた。神はエデンの園に「見ると美しく食べるとおいしい木」を土からはえさせ、さらに園の中央には「命の木と善悪を見分ける知恵を与える木」をはえさせた。

神はそこが彼の家になるようにして男に言われた。

「この園の世話をしなさい。ここはお前が必要な物を何でも与えてくれるであろう」

「だがひとつだけ、やってはいけない事が有る。この善悪を知る木の実だけは食べてはならない。この実を食べると死んでしまうだろう」

それから神は言われた。「人がひとりでいるのは良くない。彼に合う助けてを与えよ」そこで神は土を手に取り全ての動物と鳥とを形作られた。

神はそれらを男のもとに連れて来てそれぞれに名前を付けるように言われてた。そこで男は全ての動物と全ての鳥に名前を付けたがそれらの中には男の仲間になり助け手になる物はいなかった。

そこで神は男を深く眠らせ、彼が眠っている間にそのあばら骨を取りそこから女を形作られた。男は神が造られた女を見た時、自分が本当の助け手を得たことを知った。

下の絵はプラド美術館にあるボスの快楽の園の部分、神がアダムにエバを合わせた場面。

ヒエロニムス・ボスのエバの創造
By ヒエロニムス・ボス – Galería online, Museo del Prado., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45147809

「ああ、私はやっと自分と同じ種類の物を見つけた。これは私の骨の骨、肉の肉。男から取ったものだからこれを女と名付けよう」

男は女と一緒にいる事が嬉しくてたまらなかった。ふたりとも裸であったか恥ずかしいとは思わなかった。

下の絵は同じくプラド美術館のボスの快楽の園の左側部分。様々な生きとし生ける生き物と神とアダムとイブが描かれている。

ヒエロニムスボス、快楽の園部分
By ヒエロニムス・ボス – Galería online, Museo del Prado., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45147809

旧約聖書ーエデンの園、禁断の実

蛇は神が造られたこの世の物でもっともずる賢い生き物だった。ある日園の中で座っている女に蛇は近づいて囁いた。

「ひとつ聞きたい事が有るのです。神様はこの園のどの木の実も食べてはいけないとおっしゃったのですか?」

女は答えた「どの木の実を食べてもいいのよ。園の真ん中にある木の実以外はね。死んでしまわないように」

蛇は声を出さずに笑って体を震わせた。「それは本当の事ではないよ。神様は貴方たちを騙すためにそういわれたのさ。あなたたちがこの実を食べたら善悪を知って神の様になってしまうからね」

女は木の実を見た。すると木の実は大変美しく、見つめているうちに神の様に賢くなるって素晴らしいと思えてきた。

彼女は木の実を取って食べ、男にも与えた。

その実を食べたとたんに彼らは自分が裸であることが恥ずかしいと思いイチジクの葉を取って腰を覆った。

下の絵はプラド美術館にあるドイツのデューラーのアダムとイブ。イブの横に禁断の実と蛇が描かれている。

デューラーのアダムとイブ
Galería online del Museo del Prado de Madrid
wikipedia Public Domain

夕方になって神は園に来られた。男と女は木の間に隠れた。

神は2人を探しに来られ「お前たちはどこにいるのだ?」と大きな声で呼ばれた。

男は「いらっしゃるのが判ったので隠れました。裸でしたので」

神は悲しい声で「お前たちが裸だと誰が言ったのか?お前たちはあの禁じられた木の実を食べたのだね」

男は神に

「女が私にあの木の実をくれました」

神は女に聞いた

「なぜそんな事をしたのか?」

女はうなだれて答えた

「蛇が私を騙したのです」

旧約聖書ー楽園追放

ギュスターブ・ドレ楽園追放
パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=81967

神は蛇に言われた。

「お前はこの事をしたので全ての生き物の中で最も呪われる。お前は腹で這い歩き一生チリを食べるであろう。私はお前と女に恨みを置く。人々はお前を忌み嫌いお前の頭を踏み砕き、お前は毒のある歯で人の踵に噛みつくであろう」

次に神は女に言われた。

「お前は苦しまなければならない。私はお前の産みの苦しみを大きくする。あなたは夫に従い彼はあなたを治めるであろう」

最後に男に言われた

「あなたは私が食べてはいけないといった木の実を食べたのであなたは一生苦しんで地から食べ物を取る。収穫を得る為に辛く苦しい労働をしなければならない。地は茨とアザミを強くはびこらせお前の必要な植物を枯らそうとする。辛く苦しい労働の一生が終わるとお前の肉体は土に帰るであろう」

アダムという名の男は妻の名をエバと名付けた。

神はアダムとエバに動物の皮で作った服を与えエデンの園から彼らを追放させた。

それから園の東に羽の生えた生き物ケルビムと燃える剣を据えられた。

もうこれで誰も命の木に近づくことは出来なくなった。

旧約聖書に挑戦③カインとアベルの物語

旧約聖書エデンの園の物語最後に

旧約聖書に挑戦します。難解で長文の旧約聖書、内容は人類の創造から始まって読み進めると意外と面白い物語になっている。分厚い旧約聖書を手に取るチャンスがある人は少ないかもしれないがヨーロッパ旅行をするなら少しだけ知っていると絵画等の理解にとても役に立つ。

旧約聖書に挑戦①創世記の天地創造の物語。神は7日間かけて世界を造って休まれた。

旧約聖書はユダヤ教徒とキリスト教徒の聖典である。旧約の約は約束の約で神との約束の書。ユダヤ教徒にとっては唯一の聖書で旧約という言葉はキリスト教徒が付けた名前。

旧約聖書は39巻によって構成されていてイエス・キリストが生まれるより400年位前までのイスラエルの歴史が書かれている。この旧約聖書を少しずつ解りやすくまとめてみる事にした。この記事では旧約聖書の最初の天地創造を読みやすい物語にしてみた。

旧約聖書の天地創造


旧約聖書、はじまりは天地創造の物語

旧約聖書の天地創造は聖書を開くと最初のページに書かれている物語で神が6日間かけて地球の色々や人間を造り7日目に休んだと書かれている。

人間は古くから世界のすべてがどのようにして始まったのかを理解しようとした。その疑問に答えを与えようとしたのが旧約聖書の天地創造だ。

旧約聖書、創世記の天地創造を読んでみる

旧約聖書、創世記第一章

初めに神は天と地を創造された。地は形なくむなしく闇が淵の表にあり神の霊が水の表を覆っていた。

1日目-光

神は言われた。「光あれ」すると光ができ神は光を見て良しとされた。神は光と闇を分け闇を夜、光を昼と呼ばれた。夜が過ぎ朝が来た。1日目が終わった。

2日目ー空と水

それから神は言われた。「水の間に大空があって水と水を分けよ。」そのようになった神はその大空を天と名付けた。夕となり朝となった。第2日目が終わった。

下の写真はヒエロニムス・ボスの快楽の園、扉部分を閉めた状態。創世記の天地創造の人間が作られる前の世界だと言われている。

ヒエロニムスボスの快楽の園
By ヒエロニムス・ボス – Originally uploaded to the English Wikipedia by w:User:Blankfaze., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=148810

神はまた言われた。水はひとつの所に集まり乾いた土地が現れるように。神はその乾いた地を陸と名付け水の集まったところを海と名付けられた。神は見て良しとされた。

3日目ー植物

神はまた言われた。全ての種類の実がなる果樹を地にはえさせよ。そしてそのようになった。地に植物が生まれた。夕となり朝となった。第3日目が終わった。

下写真はミケランジェロの水と大地の分離・システィーナ礼拝堂。サンピエトロ寺院のミケランジェロの天地創造の部分。

システィーナ礼拝堂の天地創造
By ミケランジェロ・ブオナローティ – Web Gallery of Art[1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1551130
4日目-太陽と月と星

神はまた言われた。空に昼と夜を分け、1年の季節を分ける光があるように。そしてそのようになった。神は昼を照らすように太陽を創られ夜を照らすように月を造られた。神は星も造られた。すべてが良かった。夜が過ぎ朝が来た。4日目が終わった。

下の写真はミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画の天地創造、太陽、月、植物の創造。

ミケランジェロ天地創造、星と月

5日目-水と空の生き物

神は言われた。「水には生き物があふれるように、空には鳥たちが群がるように」神は海の生き物とあらゆる種類の鳥を造られた。何もかもが良かった。夜が過ぎ朝が来た。5日目が終わった。

6日目-人間

神は言われた。「何もかもすべて良いのこの世界の世話をする人間を作ろう」人は神に似たものに造られそこに住むために神は美しい世界を与えられた。神は喜ばれた。夜が過ぎ朝が来た。6日目が終わった。

このようにして宇宙のすべてが完全になった。

7日目-休息

7日目までにすべてを終えられ神は休息された。神は7日目を祝福されその日を他の日とは違った特別の日とした。

 

旧約聖書の創世記はいつ書かれた?

いつ旧約聖書の創世記が書かれたかは聖書には書いてないが紀元前1440年から1400年頃。イスラエル人がエジプトを脱出してモーセの死までの期間だと言われている。

旧約聖書の創世記は誰が書いた?

旧約聖書の中の創世記から申命記までの最初の5巻は「モーセ5書」と呼ばれモーセによって書かれたと考えられている。創世記以外のモーセ5書はモーセが生きた時代の出来事でモーセが記したと考えられているが創世記については未だモーセは生まれていない。へブル人の記録が粘土板に残されていたものや霊感で神から与えられたものを書いたのではと考えられている。旧約聖書のモーセ5書をモーセが書いたを否定する学者もいて今だ謎。

旧約聖書に挑戦②エデンの園の物語ーアダムとイブは神と共に暮らしていたんです

旧約聖書の創世記、天地創造まとめ

これが旧約聖書の一番最初に書かれている天地創造。神が7日間かけて世界を造り人間を造って休まれた。だから1週間は7日間で日曜日はお休みなのです。旧約聖書の創世記の天地創造は様々な絵画の主題にもなってるので身近に感じられるテーマ。