カミーノ・デ・サンチャゴ=サンチアゴの道は1000年以上も人々が歩き続けている巡礼街道で世界遺産。この記事はサンチアゴの道で一番有名なカミーノ・フランセス=フランスの道をサリアからサンチアゴまで115キロ歩く人の為の解説書。私は歩いて本当に良かった、足が痛くなったけど足はそのうち治る。大きな悟りが直ぐに与えられるわけでは無いけれど「どうしよう、無理!やっぱりやめよう」ともし迷っている人がいたら恐がらずに是非最初の一歩を踏み出して歩いてみると良いと思いまとめた記事です。
Contents
サンチアゴの巡礼道「カミーノ・デ・サンチアゴ」を115キロを歩く
サンチアゴの道とは
サンチアゴの道はスペイン北西部にある聖地サンチアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼街道。1000年以上前から続いている巡礼路でいくつかの道があるが一番有名なのがフランスの道。
ピレネー山脈のフランス側から約800キロの巡礼街道。サンチアゴ・デ・コンポステーラは聖ヤコブの遺体が埋葬されたカトリックの聖地。スペイン語で道をカミーノという。サンチアゴの道をカミーノ・デサ・ンチアゴ、略して定冠詞を付けて「エル・カミーノ」と呼ぶ。
サンチアゴの道<エル・カミーノ>の歴史
サンチアゴとは
イエス・キリストの12弟子のひとり聖ヤコブの事をスペイン語でサンチアゴという。イエス・キリスト亡き後スペインに布教にやって来たと言われているがその後エルサレムでヘロデ・オアグリッパにより首を切られて殉教。サンチアゴの弟子たちによりその遺体は船に乗せられ「行先は神のおぼしめしのまま」と天使に導かれガリシアに埋葬された、という言い伝えがあった。
9世紀のある星が瞬く美しい夜に羊飼いたちが星の真下に洞窟を発見そこに聖ヤコブの遺骸を見つけた。
その時代スペインではイスラム教徒から領土を奪い返すレコンキスタの戦争をやっていた、聖ヤコブはキリスト教徒を守る守護聖人となり「神はそれを望んでおられる」と宗教的な情熱と結びついてヨーロッパ全体に広がって行った。サンチアゴ・マタ・モーロと呼ばれレコンキスタの象徴になって行った。
歩くのに必要なのはクレデンシアル
クレデンシアルとは
クレデンシアルは巡礼者の通行証、巡礼者のパスポートになる。巡礼者用の宿泊施設アルベルゲの泊まったりサンチアゴデコンポステーラに到着して巡礼証明書を発行してもらう時に必要になる。
従来は自分が通う地区の教区教会で発行していた。現在はエル・カミーノにある教会や巡礼事務所やアルベルゲで発行してもらう。
クレデンシアルを持っていると観光施設の割引があったりホテルも巡礼者料金がある場合がある。
*アルベルゲに泊まるにはクレデンシアルが必要
*サンチアゴ到着後に巡礼証明書を発行するのに毎日2か所のハンコを押してサンチアゴに到着する必要がある。
*クレデンシアルを日本で手に入れる
日本のサンチアゴの道友の会で発行している。料金1000円。
日本のサンチアゴの道友の会のクレデンシアルを購入できるページです。
http://www.camino-de-santiago.jp/credential/get.html
*クレデンシアルをマドリードで手に入れる
マドリードでクレデンシアルを手に入れる方法は2つ。
①マドリード王宮近くのサンチアゴとサンホワンバウティスタ教会で無料で発行。
Real Iglesia Parroquial de Santiago y SanJuan Bautista
住所 Calle santiago24
寄付金が必要。クレデンシアル発行の後「お参りしてください」といわれるので後ろにあるサンチアゴ像でお参りをして1€~2€、もちろんもっと沢山でも。
月曜から土曜10時から13時、18時から20時
日曜、祝日11時から13時、18時から20時
*パスポートやDNI等身分証明書。
*巡礼を始める場所と日付けを聞かれる。
*本人のみ可能
②マドリードのサンチアゴ友の会で発行ー2€
Asociacion de Amigos de los Caminos de Santiago de Madrid
住所 Calle de Carretas14
火曜日と木曜日19時から21時
水曜日11時から13時
*パスポートやDNI等の身分証明書
*身分証明書のコピーで代理申請可能
*2€の手数料が必要
*クレデンシアルをカミーノで手に入れる
各地の巡礼事務所やアルベルゲ、教会などでもクレデンシアルを発行している。マグダレナ修道院も発行するアルベルゲのリストに出てくる。私は「万が一行ったら無かった」という事を想定して念のためマドリードで入手しておいた。
巡礼証明書La Compostelaをもらうには最低100キロ歩く事
*サンチアゴの道は沢山の道がありどの道を歩いても良いしどこから始めても良い。
*サンチアゴの道を歩いた証明書=La Compostelaをもらうには徒歩で最低100キロ、自転車と馬は最低200キロと規定がある。
*毎日カミーノを歩きながら最低2か所のSELLO=ハンコをクレデンシアル(巡礼手帳)に押し、日付も書く事。
サンチアゴに到着後巡礼事務所に持って行くと巡礼証明書(無料)が発行される。
マドリードからサリアへの行き方
マドリードからサリアへの移動は私たちはキャンピングカーで移動しサリアのマグダレーナ修道院の前に車を置いて5日間で歩き路線バスでサリアに戻って来た。在住者で車ありならこれが一番無駄が無いはず。
レッカー車の会社が車をサリアからサンチアゴに200€で移動してくれるサービスがあった。サリアに車を置いてサンチアゴに着いたら車をピックアップできるサービスだ。結局200€は勿体ないので私たちは路線バスでサリアに戻ったが便利なサービスではある。
マドリードからサリアにバスや鉄道で移動
日本や他の国からマドリードに入りサリアに行く方法は3つ。簡単でおすすめは①の長距離バスでルーゴ、乗り換えてサリア
①マドリードからルーゴ行きの長距離バスにのり(約6時間30分~7時間)ルーゴからサリア行きの路線バス(約30分)に乗り換える。
*マドリードからルーゴ(LUGO)
バス会社ALSA マドリード南バスターミナルからEstacion sur de autobuses
(ALSAはマドリードのバラハス空港ターミナル4からも出発している)
ALSAの時間を調べるページにリンクします。出発地と目的地を英語やドイツ語、フランス語も選べる。
*ルーゴからサリア(SARRIA)
ルーゴに着いたらMonbusのバスに乗り換える。バス会社Monbusのページ。出発地と目的地を入れて日付を選択、右上から英語も選べる。
②マドリードからサンチアゴまで路線バス又は飛行機、鉄道で行き、サンチアゴのバスターミナルからサリア行きのバス会社Monbusのバスに乗る。
バス会社Monbusのページ。出発地点と目的地、日付けを入れると時間が出てきます。右上の所から英語も選べる。
③マドリード・チャマルティン駅からサリア行きのスペイン国鉄Renfeに乗る。本数が少なく日によって時間が違うので注意。
*月曜から金曜と日曜はトレン・ホテルという夜行寝台列車が出る。マドリード・チャマルティン発22時30分サリア着朝6時50分51€90c(時間や値段は季節や連休などに変更があるので必ず確認してください)
スペイン国鉄Renfeのページです。出発地と目的地、日付を入れて検索できます。
サリアのバスターミナルから
サリアのバスターミナルからカミーノの出発地点マグダレーナ修道院アルベルゲまでは徒歩15分、最後に少し登りがある。
サリアの街にはさまざまなタイプの宿泊施設があるのでそれぞれの旅に合った所を探すと良い。
サリアのバスターミナルはバスの出る時間くらいしか人はいない。タクシーもいなかった。お手洗いは無料で使える。駅を出てすぐにスーパーマーケット有。
(写真下)正面の丘の上に有るのがマグダレーナ修道院アルベルゲ。丘の上なので最後は少し登坂になる。
歩道にサンチアゴの道の象徴ホタテのモザイクで気分は盛り上がります。
サリアのマグダレナ修道院アルベルゲ
マグダレナ修道院のアルベルゲについて
一泊10€
ベッド数110
予約可
時間11時から23時、出発は6時から8時30分の間
営業は3月15日から11月2日まで
(下)ホームページ日本語で見れます
http://www.alberguesdelcamino.com/ja/sarria/albergue-monasterio-de-la-magdalena/
サンチアゴの道持ち物と持って行って良かった物
ここでは5~6日間でサリアから115キロを歩く場合の持ち物リスト。アルベルゲにも泊まる場合もありで必要な物。パスポートやお金クレジットカードなど基本的な物以外でまとめてあります。予算があってすべてホテルやペンションに泊まるならシャンプーやS字フック選択物干しは不要。
荷物はなるべく軽くする努力が必要。女性で6キロ~7キロ位までが良いと思う。
*リュック=私は40Lのリュックををマドリードのデカトロンで30€ほどで購入した。サイズは30Lでも充分だが私は別の機会にも使えるように大きめのを購入した。なるべく軽いのを選ぶといい。
*クレデンシアル巡礼者用のパスポート
*寝袋(私は既に持っていたオールシーズン用で行ったが1.1キロもあった、冬以外はもう少し軽いのでもいい)新しく買いたくなかったのでこれ。
*小さなバッグ(クレデンシアルやお金などすぐに出せるように)この黒いバッグはマドリードの中国人ショップで2€位、貴重品とクレデンシアルとスマホ、リップクリーム等をここに入れていた。
*歩く靴=履きなれた靴で登山靴かトレッキング用の靴の裏がしっかりしたもの。砂利道やぬかるみもあるくが急な山道は無い。
*日焼け止めクリーム。写真下は私が普段から使っているスペインのAveneの温泉水で作った日焼け止めクリームSPF50。これ一本で2か月は持つ絶対焼けないすぐれもの。16€50c位。肌色の色付きと色なし白がある。スペイン各地の薬局で購入できる。
*帽子、登山用の布地の物と悩んだ末麦わら帽子にした。マドリードのマヨール広場近くで10€。折りたためるのでいらない時はリュックに入れられる。
*ポンチョ=リュックごと頭からかぶれるタイプのもの。
*トレッキング用のサンダル(豆が出来て靴を履けないとき、シャワーの時とスリッパ兼用)途中で足に豆が出来た靴が履けなかったので靴下をはいた上にこのサンダルで歩いた。トレッキング用サンダルで検索すると沢山出てきます。
*トレッキング用のストック=絶対合った方がいい、心の支えにもなった。なるべく軽めのを一本は最低持って行くと転ばぬ先の杖になる。
*S字フック=アルベルゲでシャワーを浴びるときに貴重品をシャワーブースの中にかけたりシャンプーなどをかけるのに使う。
*洗濯物干し=靴下や下着等洗濯したものを干す場所が確保できない場合があるのでなるべく軽い物をひとつ持って行った。
*バッテリーバンク=私は持って行ってよかった。個人的にスマホをよく使うので毎日充電が必要、アルベルゲでコンセントがベッドの近くにない、コンセントは既に誰かに確保されていた等。
*耳栓とアイマスク=アルベルゲでのイビキ対策用
*軽い誘眠剤=私はスペインの薬局で売っているDormidinaを持って行った。似たようなものがカミーノの薬局でも購入できる。
*登山用パンツ2本=今履いているパンツと予備を1本。ポケットが沢山ついている速乾性の物が便利。
*スポーツブラとシャツや下着=干しててあまりセクシーじゃないのを探した。でもヨーロピアンは気にしていない模様。
*パジャマ兼部屋着のシャツとジャージのうすいの
*薄いダウンジャケット
*山用のヤッケ
*虫刺されパッチ=どこでやられたか不明だがのみかダニにやられた。
*小さい懐中電灯=暗い中準備する時用。スマホのバッテリーを使いたくないので。
大抵の物は現地でも購入できる。常備薬、虫刺されパッチはスペインにないので日本からどうぞ。
大丈夫、心配せずに出発しよう
「荷物を持ってそんなに歩ける?」「途中で歩けなくなったら大変だし」と思って躊躇している場合は現地に色々なサービス(以下)があって何とかなるので最初の一歩を歩きだすといいと思う。スペイン語が判らなくても各地簡単な英語が通じ絶対に誰かが助けてくれる。一歩足を前に出せば何とかなる。
*荷物は運んでくれるサービスがあり3€で次の目的地に持って行ってくれる。
*タクシーも電話番号がいろんなところに書いてあり途中で呼ぶことが出来る。
*歩けばとにかく着く。
巡礼なのか
巡礼というと禁欲的なイメージが有るが目的地に着くため毎日歩くゲームだ。様々な思いの人達が同じ方向に歩くことによって何かを手に入れる。手に入るのは今ではなくもっと遠い将来かもしれない、いや重い荷物を背負って歩いたから大きな代償が与えられるかは不明だ。ただ帰って来てから感じるのは歩いていた時が一番幸せだった。目的は「富士山に登りたい」や「サグラダファミリアが見たい」と同じでいいと思う。宗教的な解釈に縛られる事無くただ歩くために行く、そして目的地だけは用意されているのだ、それがサンチアゴの道。
サンチアゴに着いたらサンチアゴ様にハグをしましょう
大聖堂の中央祭壇の横から階段を登ると聖ヤコブ像に後ろからハグが出来る。
その後反対側から階段を降りると地下にサンチアゴ様のお墓がある。
サンチアゴ・デ・コンポステーラに到着したらサンチアゴの大聖堂に埋葬されるサンチアゴのお像にハグをして地下にあるお墓詣りをします。カトリック教徒でなくても大丈夫。サンチアゴの道はもともとサンチアゴ様詣で、その為に歩いたのだからご挨拶しましょう。
大聖堂は9時から20時、入り口はプラテリアの門のみ(現在工事中の為)
*2019年はサンチアゴ大聖堂内部は工事中でミサは行われない。したがってボタフメイロも無い。巡礼者用のミサはサンフランシスコ教会で12時から。
*工事は2020年7月に終了予定。次の聖年2021年に向けての工事。
*栄光の門は予約制で約45分のガイディングツアーのみ。栄光の門を見る場合は当日では予約はほぼ不可能。ネットから早めの予約することをお勧めする。
*栄光の門は13世紀サンチアゴの大聖堂の入り口だった。ロマネスクの素晴らしい彫刻で聖人達の表情や動きなど12世紀の物とは思えないが素晴らしさ。10年間の修復を終えて公開された。
サンチアゴの聖年
7月25日が日曜日になる年をサンチアゴの聖年=アニョ・サントという。聖年にだけ免罪の門から大聖堂に入ることが出来そこから入った人には多くの罪が許される。
次の聖年は2021年。最近では1993年、1999年、2004年、2010年が聖年で免罪の門が開けられた。2016年はローマ法王からの特別聖年という事で一年間免罪の門が開けられた。
サンチアゴに着いて巡礼証明書をもらう場所
サンチアゴの大聖堂があるオブラドイロ広場から徒歩3分の所。
パラドールから下り坂と階段を降りて右に曲がった所に入り口。巡礼者が到着する13時頃は混みあっているので並びたくない場合は少し時間をずらして入ると良い。
*入り口でクレデンシアルのチェックがある。
*内部は撮影禁止
*証明書は無料。
*別途何キロ歩いたかの証明書が必要か聞かれる。3€で発行してくれる。
サンチアゴ大聖堂から巡礼事務所徒歩3分
サンチアゴの道の旅を3分のビデオにまとめてあります。
サンチアゴの道をサリアから歩いて感じた事
*カミーノは荷物を作る所から始まっていた。要らないものをどんどんリュックから出していくときに「道」の本質が見えて来た。
*毎日朝早く歩き始めると森の中の臭いが時間によって変わって行くのがわかったし鳥の鳴き方が雨の日や曇りの日で違って聞こえた。景色がキラキラ輝いて巡礼者が歩く音や肌に感じた空気は一生忘れない。
*ゆっくりでも歩けば着くことに驚いた。30キロも歩いたのは人生で初めてだったがとにかく歩いて行けば着くという単純な事に感動した。
*サンチアゴに着いたら不思議と哀しくなった。心が空っぽになって脱力した。到着した事で目的を失ってしまったことに気がついた。
*思い返すと毎日重い荷物を持って苦しいと思いながら歩いていた時が一番幸せだった。
*ひとりで歩いている人が多くてずっと一人で歩くともっと心の深い深い所まで旅が出来るのではと思った。
*次はピレネーを超えて歩きたい、冬もいいかも、と夢は膨らんだ。
下はサンチアゴのパラドールを動画にしました。宿泊してもいいしお食事だけでもいい、お茶を飲みに行ってもいいですね。