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ほんの少しの知識で美術館は何倍も楽しくなる。
宗教画、知れば楽しく鑑賞できる
今日はキリスト教の宗教画の楽しみ方をご紹介。キリスト教の宗教画には決まり事があって持っている物で誰かわかるようになっている。
この持っている物を「象徴物」=「アトリビュート」と呼ぶ。
プラド美術館の作品を中心にキリスト教の聖人達を見ていきます。
アトリビュート=象徴物
これを知っていたら絶対楽しめる宗教画
キリスト教の宗教画は苦手な方が多いかも。でもアトリビュートや決まりを抑えれば楽しく鑑賞できます。
もともとはうまく絵が描けなかった頃、聖人が誰かわかるように少しづつ決まっていった。
聖ペテロは黄色い服に鍵
黄色い服に鍵=聖ペテロ
イエス・キリストの一番弟子「ペテロ」はもともと漁師。
聖書によると
イエスはペテロに鍵を授けた。
「私についてきなさい。貴方を人間を釣る漁師にしてあげよう。」
「そして貴方をペテロ(岩)と呼びその岩の上に我々の教会の基礎を作ろう」
「貴方にこの鍵を捧げよう。天国の鍵を」
ということで彼の象徴物は「鍵」
たいてい黄色い服を着て天国の鍵を持っています。
知ってました?ローマ法王はペテロの後継者
ペテロが殉教したところが今のサンピエトロ寺院。私は貴方をペテロ(岩・イタリア語でピエトロ)と呼びその岩の上に我々の教会を…の言葉が成就したということでバチカンのサンピエトロ寺院がカトリックの総本山に。ローマ法王はペテロの後継者。
では鍵を持っている聖ペテロを見ていきましょう。
ジュゼップ・リベラ(ホセ・リベラ)の聖ペテロ
<聖ペテロ、プラド美術館>
*ジュゼップ・リベラはスペインではあまり評価されずイタリアのナポリで活躍した画家。
*カラバッジョの明暗法を継承しレアリズムの画家として人気。
*聖人を描いているのに理想像ではなく現実の人間臭い感じ。額の皺の深さにモデルはおそらくナポリの漁師。
エル・グレコの聖ペテロ
<聖ペテロ、トレド・グレコの家博物館>
エル・グレコはギリシャ人画家。トレドに移住してほとんど彼の注文主は教会だった。
シリーズで12弟子を描いていてそれぞれの聖人が象徴物を持っている。
ピーターポール・ルーベンスの聖ペテロ
<聖ペテロ、プラド美術館>
ルーベンスは画家だけでなく人文学者で外交官もやっていたエリート。
イタリアのマントバ公からスペイン王フェリペ3世へのプレゼントを抱え外交官としてスペインにやって来る。
こっちも聖ペテロ↓↓↓
「逆さ十字の刑」も聖ペテロ
同じく聖ペテロはローマで逆さ十字の刑にされるので逆さ十字の絵も。
知ってました?
ローマのサン・ピエトロ寺院は聖ペテロが逆さ十字に会ったところに造られた教会。
カラバッジオの聖ペテロ=逆さ十字
<聖ペテロ ローマ、バジリカ・デ・サンタ・マリア・デル・ポポロ>
エウヘニオ・カヘスの聖ペテロ=逆さ十字
<聖ペテロ トレド大聖堂>
では他の聖人達も見ていきましょう
少し女性っぽいのが聖ヨハネ↓↓↓
聖ヨハネの象徴物は「盃」
聖ヨハネ
キリストに最も愛された。
たいてい年齢も若く女性的か中性的に作品になる。
エフェソスで毒のお酒の飲まされて殺されかけたが盃が蛇になって逃げていって助かったという話から象徴物は「盃」
エル・グレコの聖ヨハネ
<聖ヨハネ プラド美術館>
聖ペテロと比べると若くて中性的な感じなのがよくわかる。
手に蛇がついた盃を持っている。
ピーターポール・ルーベンスの聖ヨハネ
<聖ヨハネ プラド美術館>
肌の色の透明感や髪の巻き毛が綺麗。
やはり手に盃を持っている
*手に盃を持っていて若い男性、ちょっと中性的か女性的だったら聖ヨハネで間違いなし。
こちらも名前はヨハネですが別のヨハネ↓↓↓
洗礼者ヨハネは毛皮と生首
毛皮を着ていたら洗礼者ヨハネ
洗礼者ヨハネって誰?
*イエス・キリストのいとこで荒野を禁欲生活をおくりながら人々に洗礼を行っていた。
*ラクダの毛皮をまとっていたので象徴物の一つは毛皮。
エル・グレコの洗礼者ヨハネ
<キリストの洗礼、プラド美術館>
上作品の下半分拡大図↓
右側の男性が腰に毛皮を巻いているので洗礼者ヨハネ。聖書の場面でイエス・キリストに洗礼を施しているところ。
エステバン・ムリーリョの洗礼者ヨハネ
<幼子の洗礼者ヨハネ・プラド美術館>
毛皮見えにくいですが背中側のあたり。
レオナルド・ダ・ビンチの洗礼者ヨハネ
<洗礼者ヨハネ・ルーブル美術館>
誘ってる感じですがお約束の毛皮を着て十字架を持っているので洗礼者ヨハネです。
「私が欲しいものは洗礼者ヨハネの首」
洗礼者ヨハネは首を切られて殉教したので「首」
洗礼者ヨハネは「悔い改めよ、天国は近づいた」と言って人々にお説教をしていた。
エルサレムの王ヘロデ・アンティパスが兄弟の妻を娶ったのを非難していた。
妻ヘロデアの娘がサロメ。
王の誕生日会でサロメがうまく踊った褒美に欲しいものは「洗礼者ヨハネの首」と言ってっ首を切られて亡くなった。
ティチアーノの洗礼者ヨハネの首
<洗礼者ヨハネの首 プラド美術館>
サロメがお盆に洗礼者ヨハネの首を持って踊っている。
カラバッジオの洗礼者ヨハネの首
<洗礼者ヨハネの首 マドリッド王宮>
やはりサロメが洗礼者ヨハネの首を持っている。
女性で赤い服にブルーのベールは絶対マリア
聖母マリア
イエス・キリストの母マリア
*基本赤い服にブルーのベール。
*おそらく12世紀頃から使われていた。
*真実や慈悲を現すブルーに血や愛を現す赤が使われる。
*その他の象徴物→純潔を表すユリ、12の星の冠や三日月など
例外はフランドル絵画ではブルーのみ又はブルーの服に赤いベールの場合もある。
19世紀にローマ法王ぴお9世により無原罪の御宿りの教義において聖母の衣装は白になる。
ベラスケスの聖母マリア
<聖母戴冠 プラド美術館>
エル・グレコと工房の聖母マリア
<聖母マリア プラド美術館>
フラ・アンジェリコの聖母マリア
<聖母マリア プラド美術館>
ブルー青は希少だった
ブルーはラピスラズリからとるのでたいへん高価なもので希少価値のあるものであったのも聖母に使うのにふさわしいと昔の人は感じたのかもしれない。
生命は海からやってきたなら命の根源を感じるからなのか様々な絵画に綺麗なブルーが使われそれを見た人間が癒されてきた。
アレキサンドリアの聖カタリーナ=車輪
聖カタリーナまたはサンタ・カタリーナって誰?
*アレキサンドリアの知事の娘。
*3世紀頃当時の最高の教育を受けたカタリーナは母親の影響でキリスト教徒に。
*迫害者ローマ皇帝マクセンティウスのもとに行きキリスト教の迫害を非難する。
*手足を車輪に括り付けて転がされるという拷問を命じられるがカタリーナが触ると車輪はひとりでに壊れた。
*その後斬首刑。
カラバッジオの聖カタリーナ
<聖カタリーナ ティッセン・ボルネミッサ美術館>
カラバッジオのドラマチック感が出ていて挑戦的な視線。綺麗な赤い座布団の上には殉教聖人を現す棕櫚
棕櫚の葉は殉教聖人を表す
フェルナンド・ヤネスの聖カタリーナ
<聖カタリーナ プラド美術館>
足元に壊れた車輪。
聖ルシアは「眼」
びっくりな絵ですがシラクサの聖ルシアはディオクレティアヌスの時代キリスト教を捨てるよう強要される。のどを切っても死なないので目をくりぬかれた。ルシアはラテン語で光という意味luxから。今も光の神様。目の悪い人の守護聖人。冬至の少し前12月13日がサンタ・ルシアの日。一年で最も日照時間が短い時期に光に帰ってきてもらうためサンタルシアを祝った。
スルバランの聖ルシア
<聖ルシア・フランス・シャルトル美術館>
聖アガタは乳房
聖アガタって誰?
*シチリア島カターニアの裕福な貴族の生まれの美しい娘。
*子供の頃にカトリック教徒として神に身を捧げる決意をしていた。
*ローマの総督が彼女の美貌と財産に目をつけ求婚するが断られ腹いせに牢屋に入れ乳房を切り落とす。
*祈り続けると傷が完治するがそのあと火あぶりの刑で殉教。
スルバランの聖アガタ
<聖アガタ フランス・モンペリエ・ファーブル美術館>
お盆の上に眼。
スルバランの聖女達はファッション雑誌みたいで綺麗です。
宗教画は意外と面白いのまとめ
象徴物を知っているだけで美術館の時間が楽しくなります。知らない街で知っている聖人に出会うだけで旅はもっと豊かになります。
象徴物はもっと沢山あって探していくと面白いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。